皆さんは「糖尿病」と聞くと、どんな印象を受けますか?
「甘いものを食べすぎたら糖尿病になる」
「一生、味気ない食事しか食べられない」
「糖尿病になったら、普通の生活は送れなくなる」
・・そんな誤った印象があるかもしれません。
私たちが生きていくための大切なエネルギー源として血液中にブドウ糖が存在します。このブドウ糖がなくては生きていけませんが、多すぎてもよくありません。糖尿病とは、この血液中のブドウ糖(血糖)が多くなる病気です。この血液中のブドウ糖の割合を血糖値と呼びます。健康なひとは、食事をすると一時的に血液中のブドウ糖が増えますが、すい臓から出ている「」というホルモンによってブドウ糖を体内に取り込み、体内に蓄え、エネルギー源として使うことができる状態にしてくれます。このインスリンの働きによって、血糖値は一定の範囲内におさまっています。

どのようにして発症するの?

インスリンの分泌や働き方に問題が生じると、血糖値が上がって糖尿病を発症します。
その問題とは、次のようなことが考えられています。
①インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)
②インスリンの分泌が遅れたり、分泌量が少なくなる
③インスリンが十分に分泌されない

糖尿病の種類

があり、その種類によって糖尿病になる背景も違います。ひとつは、インスリンを作るすい臓の細胞が破壊されてインスリンが分泌されなくなる1型糖尿病です。もうひとつは、インスリンの分泌に問題が生じたり、働きが悪くなることによって起こる2型糖尿病です。日本では、95%以上の糖尿病患者さんが2型糖尿病です。2型糖尿病は、いくつかの遺伝因子と「食べすぎ」「運動不足」「ストレス」といった生活習慣が加わって、インスリンの働きを悪くしてしまい発症します。その他に特定の原因や疾患、あるいは妊娠が原因で起こる糖尿病があります。

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日本人の糖尿病は年々増え続けています。2012年の国民健康・栄養調査では、「糖尿病が強く疑われる人」は950万人にまで増加しています。また、およそ4人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍であるといわれています。

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糖尿病の症状

初期の糖尿病は自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断で「糖尿病」と言われても、ピンとこなくて放置するひともいるでしょう。しかし、自覚症状が出たときには、すでに合併症が進んでいることも少なくありません。放置すればするほど、治療が難しくなる病気です。下記の代表的な糖尿病の症状に当てはまるものがあれば、早めに近隣のお医者さんへ一度ご相談してみてください。

  • のどがすぐ乾き、水をよく飲む
  • おしっこの回数が多く、量が多い
  • なんだか疲れやすい
  • お腹がすいてよく食べるのに、体重が減っていく
  • 足がつったり、しびれたりする
  • 目がかすんだり、黒い点が見えたりする
  • ちょっとした傷が治りにくい
  • 男性の場合、性機能の問題が生じる(ED)

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糖尿病になると何がこわいの?

血管は、心臓から送られる血液を全身に循環させる重要な器官です。糖尿病になると、血管の中は血糖値が高い状態が続きます。血糖値が高い状態は、血管を傷つけたり、血液をドロドロにしたり、さまざまな負担を血管に与えます。糖尿病は、長い時間をかけて血管をボロボロにしていく病気とも言えます。
特に、細い血管(毛細血管)は、もともと血管自体がもろく、血糖値が高い状態の影響が早いうちから出てしまいます。毛細血管が集中する網膜、腎臓、手足に現れる障害の「」「」「」は糖尿病の三大合併症(細小血管障害)と言われ糖尿病で起こる確率が高い合併症です。
血糖値が高い状態は、毛細血管だけではなく太い血管にも影響を与えます。大血管障害と呼ばれる、脳梗塞・心筋梗塞など直接命にかかわる病気を引き起こすこともあります。
これらの合併症は、糖尿病の可能性がある、あるいは糖尿病と診断されたときから進行し、5~10年くらいで出現すると考えられています。血糖値が高い状態をほうっておくと、ゆくゆくは失明や透析や手足の壊疽えそを引き起こすとも言えます。反対に今の生活習慣を改善し、正しい治療をすれば合併症を防ぎ、普通の人と変わらない生活が送れます。

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血糖の検査による糖尿病の診断

糖尿病は、空腹時、ブドウ糖負荷後2時間、あるいは随時血糖値と、過去1~2ヵ月の平均的な血糖値を示すHbA1cの値によって判定されます。血糖値を別の日に2回測定して糖尿病型であったり、血糖値とHbA1cがともに糖尿病型の場合には糖尿病と診断されます。
※随時血糖値:空腹時、ブドウ糖負荷後に関係なく測定された血糖値

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治療の種類

2型糖尿病には、食事や運動などのしています。ですから、糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法であり、この2つの治療法は長く続けていく必要があります。食事療法と運動療法で血糖値が改善しない時や、血糖値が非常に高く、急いで下げる必要がある場合などに薬物療法が行われます。
1型糖尿病では、インスリンによる治療が最初から欠かせませんが、血糖値をより良くコントロールし、インスリンの量を減らしていくためにも、やはり食事療法、運動療法は基本の治療として続けていくことが大切です。

食事療法

食事からとるエネルギーが多すぎる(過食)と、それを処理するためのインスリンが足りなくなって血糖値が高くなります。食事療法では、それぞれの患者さんの体格や毎日の活動の量に応じた適切なエネルギーをとれることを目標として、食事の量や栄養バランスを考えます。
・運動療法
運動療法は消費エネルギーを増やすことで、体内のエネルギーが余分になることを抑えて、肥満の解消にもつながります。また運動療法により、筋肉や肝臓のインスリンに対する反応性が良くなり、体内のブドウ糖をスムーズに利用できるようになります。心臓、腎臓、関節などに病気がある方など、運動が勧められないことがありますので、必ず主治医に相談し、指示に従って取り組むようにしましょう。

薬物療法

糖尿病の薬には、血糖降下薬(飲み薬と注射薬)とインスリン製剤(注射薬)があります。2型糖尿病では、食事療法や運動療法を数ヵ月行っても治療効果が十分でない時に、薬による治療を始めることが一般的です。どのような薬を始めても、食事療法や運動療法は必ず続けていきます。血糖降下薬にはさまざまな種類があり、や使用目的が違います。血糖降下薬は、個々の患者さんの血糖値の状態、すい臓からのインスリンの分泌量、筋肉や肝臓のインスリンに対する反応性などを測定したり推定したりしながら選んでいきます。2種類以上の薬を一緒に飲むこともありますし、異なる作用機序の薬をひとつに合わせた配合剤も使用されています。2型糖尿病の患者さんの中でもインスリン分泌が少なくなり血糖降下薬では血糖のコントロールができなくなった方や、1型糖尿病の患者さん、妊娠している方、よりしっかりした血糖コントロールが必要となる(手術予定がある場合など)患者さんには、インスリンを定期的に注射するインスリン療法を行います。患者さんの状態に応じて、複数のインスリンを組み合わせて使うこともあります。糖尿病の薬は、医師、薬剤師から指示された時間を守って、毎日使い続けることがとても大切です。薬をきちんと使わないと、血糖コントロールがうまくいかないだけでなく、命に関わる状態になることもあります。また、薬の種類や患者さんひとりひとりの状態によって、薬を飲み忘れた時の対処方法や、の服用方法が違います。医師に、このような場合の薬の使い方について、事前にしっかり指導を受けておくようにしましょう。