血液中の尿酸が正常の範囲を超えて多い状態を高尿酸血症といいます。高尿酸血症そのものは、なんの症状もありませんが、放っておくと尿酸が関節や腎臓などで結晶のかたまりとなって痛風や腎障害を引き起こします。 高尿酸血症かどうかという診断は血液100mL中の尿酸の量(mg)すなわち血清尿酸値を指標にして行います。血清尿酸値が7.0mg/dLを超えたら、定期的に尿酸値を測定することが大切です。そして、8.0mg/dL以上になったら、必ず医療機関を訪れ、血清尿酸値だけでなく腎臓などのチェックもしてもらいましょう。高血圧や他の生活習慣病を合併していたり、合併症がなくても血清尿酸値が 9.0mg/dL以上の場合は薬物治療が必要です。また、血清尿酸値の治療目標値は6.0mg/dL以下にするのがよいとされています。異論はありますが、虚血性心疾患、脳血管障害などになりにくいためといわれているからです。
尿酸とは?
尿酸はからだの細胞の新陳代謝やエネルギーの消費によってできる老廃物です。尿酸のもとはプリン体という物質で、細胞や食品中などに含まれています。わたしたちの体内では毎日プリン体から尿酸がつくられ、腎臓から尿に溶けて排泄されています。尿酸は体内でたいへん溶けにくい性質をもっています。そのため、増えすぎてしまった尿酸は溶けきれずに結晶化していきます。この尿酸の結晶がからだのいろいろな部分に沈着して害を及ぼします。
高尿酸血症の原因は?
からだの中では、毎日ほぼ一定量の尿酸がつくられ、ほぼ同量が主に腎臓から尿中へ排泄されています。しかし、尿酸がつくられすぎたり排泄されにくくなったりして、この産生と排泄のバランスが崩れると、体内に尿酸の量が増えすぎて高尿酸血症になります。バランスが崩れる原因ははっきりとはわかっていませんが、生まれつきの体質である場合がほとんどで、その他に肥満、飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレスなどの要因が関係していると考えられています。
痛風とは?
痛風は、尿酸の結晶が関節に沈着して起こる病気です。痛風の発作は、関節が赤くはれあがり激しい痛みを伴うのが特徴です。ある日突然起こり、放っておくと1~2週間くらいでおさまります。しかし、そのままにしていると数年のうちに必ず再発し、だんだん慢性化していきます。発作がおさまっている間はなんの症状もありませんが、放っておくと尿酸の結晶が関節だけでなく腎臓にも沈着し、腎障害等を引き起こします。また、痛風結節といわれる尿酸のかたまりが耳や足の親指、肘の関節などにできたりします。痛風はこれらの病気の警鐘の役割をしているともいえるでしょう。
痛風にかかりやすい人は?
痛風にかかるのは、ほとんどが男性です。比較的几帳面で行動的なひと、仕事をバリバリやるひと、アルコールをたくさん飲むひと、肉食を好むひとに多いといわれています。20歳代から50歳代に起こりやすく、女性や子供には少ない病気です。痛風になりやすいかどうかは、多少遺伝的素因が関係しています。また、最近は食生活の欧米化、アルコール摂取量の増加、体型の肥満化、ストレスの増加など環境要因の変化によって、患者さんの若年化が進んでいます。
もし高尿酸血症・痛風と言われたら
食事で気をつけること
- 総カロリーを制限する
- 標準体重にコントロールする
- 乳製品を多くとる …などがポイントです
肥満のひとほど血清尿酸値が高く、体重が下がれば血清尿酸値も下がっていくことが知られています。したがって、カロリーのとりすぎに注意し、肥満を避け、標準体重にコントロールすることが重要となります。また、体重のコントロールは高尿酸血症に対してだけではなく、高血圧症や脂質異常症(高脂血症)などの合併症の治療や予防にもつながります。また、プリン体を大量に含む食品の中で、肉類・内臓類・魚介類のとり過ぎは高尿酸血症・痛風になりやすいことが知られています。しかし最近の研究で、同じ高プリン体食品でも、干ししいたけなどの野菜類は、ほとんど影響しないことがわかりました。特に低脂肪乳製品や大豆などは、継続的にとると痛風の予防になるという報告もあるので、意識してバランスよくとるようにしましょう。
食品と痛風の関連
・とりすぎると痛風発作を起こしやすい食品
●肉類・内臓類(牛、豚、鶏)
●魚介類(赤身魚、白身魚、エビ、カニ、タコ、イカ、貝類)
・とりすぎても痛風発作を起こしにくい食品
●高プリン体野菜(干ししいたけ、ひらたけなど)
●高脂肪乳製品
・継続的にとると痛風発作の予防になる
●乳製品
●低脂肪乳製品
●植物性たんぱく(大豆など)
お酒との関係
アルコールはどんな種類でも飲み過ぎると確実に血清尿酸値を上げます。これは、アルコールが尿酸の産生を高めたり尿酸の排泄を抑制するために起こります。また、お酒の中に含まれるプリン体が原因になることもあります。
*休肝日を2日/週以上設けましょう
お酒を毎日飲むひとと、「休肝日」を設けているひととを比較してみると、アルコールの全体量は同じでも、毎日飲むひとの方が血清尿酸値が高いことが知られています。なるべくお酒を飲まない日を設けるようにしましょう。いずれにしても、食べ過ぎ・飲み過ぎは避けましょう。
運動で注意することは?
肥満を避けるためにも、適度な運動は必要です。水泳、軽いジョギング、散歩、サイクリングなどの有酸素運動は肥満防止の面からも必要です。自分にあった運動を定期的に行いましょう。しかし、激しい運動(無酸素運動)は逆に血清尿酸値を上昇させるので避けましょう。また、運動により大量の汗をかき、そのままにしていると血液が濃くなって血清尿酸値が上がったり、尿が濃くなって尿酸が溶けにくくなったりします。汗をかいたら、水分を十分にとりましょう。
他の病気との関係は?
血清尿酸値が高いひとは、そうでないひとに比べて脂質異常症(高脂血症)の割合が高く、血液中のコレステロールや中性脂肪が多いことがわかっています。また、高血圧症、脳血管障害、虚血性心疾患との合併が多いこともわかっています。高尿酸血症・痛風だから、これらの病気になるというわけではありませんが、かかりやすい体質といえるので、注意が必要です。このように、血清尿酸値はいろいろな病気のマーカーになりますので、定期的にチェックすることが大切です。
痛風発作が起こったら?
●痛風発作の応急処置
発作が起こった部位は、赤くはれて熱を持ちます。このような場合は、患部を心臓より高い位置に保ち、冷やすと痛みが軽減されます。暖めたり、マッサージしたりすると、かえって悪化するので避けましょう。
●痛風発作の前兆があったら
痛風発作の起こり始めには患部がむずむずしたり、はれぼったくなったりする場合があります。この前兆期にコルヒチンを1錠服用すると発作を防ぐことができます。しかし、コルヒチンは起こってしまった発作にはあまり効果は期待できません。また、大量に長期服用すると重大な副作用を引き起こしますので注意が必要です。
●痛風発作時には
痛風発作が起こったら、インドメタシン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ナプロキセンなどの消炎鎮痛薬を発作の間だけ短期間服用します。痛風発作は通常 1~2週間で大体おさまりますので、これらの薬を長期間服用し続けることはありません。
高尿酸血症の治療
食事の調節やアルコール制限などをしても血清尿酸値が高いひとは薬物治療を行います。血清尿酸値を下げる治療は、痛風発作の痛みをとるだけの対症療法に対し、高尿酸血症・痛風そのものを改善する根本療法となります。
・高尿酸血症の治療方針
●尿酸値を下げる薬はタイプによって使い分けます
・尿酸が排泄されにくいタイプには尿酸の排泄を促進する薬ベンズブロマロンなど
・尿酸がつくりだされやすいタイプには尿酸の生成を抑制する薬アロプリノール、フェブキソスタット
自分の高尿酸血症のタイプにあてはまる薬を飲むことによって、効率よく治療することができます。副作用の発現を抑えることにもつながります。
●高尿酸血症は長期間かけて治療しましょう
薬によって血清尿酸値は正常にもどります。しかし、高尿酸血症そのものは非常に治りにくい病気なので、薬を飲むのをやめると、だいたい 2週間でもとの高尿酸血症の状態にもどってしまい、長い間放置されると尿酸塩の沈着による合併症の恐れがあります。ですから、根気よく薬を飲み続けることが大切です。
治療中の注意点
もし勝手に薬の服用を中断していて痛風発作が起きたら、すぐに医療機関に行き、尿酸値を下げる薬の服用を中断していたことを医師に伝え、適切な処置を受けましょう。
●服用中の薬を医師に伝えましょう
●なにか異常があったらすぐに医師に相談しましょう
●尿酸値を下げる薬を飲み始めてから発作が起こることもあります
痛風発作が再発するのは、関節などにたまっていた尿酸が溶けてなくなる途中だからです。治療を始めて半年間は発作が起こることもあります。このような場合は尿酸値を下げる薬を飲みながら、痛みをおさえる消炎鎮痛薬をあわせて飲みます。尿酸値を下げる薬の服用を中断すると発作
がひどくなる可能性があるので注意しましょう。
尿路管理について
尿酸は尿に溶けた状態で排泄されますが、尿が酸性だと非常に溶けにくくなるという性質を持っています。そのために次のような尿路管理が必要となります。
●水分(お茶や水)を多くとって尿の量を増やしましょう
健常なひとの尿量は 1日1~1.5リットルぐらいですが、高尿酸血症や痛風の患者さんは尿量を1日2リットルぐらいにするとよいといわれています。重度の腎障害や心臓病などで水分の摂取量を制限されているひと以外は、お茶を飲んだり、多めの水で薬を飲むなど、工夫するとよいでしょう。
●尿をアルカリ化します
尿酸は、中性~アルカリ性の尿には溶けやすい性質を持っています。尿が酸性のひとは、尿をアルカリ化する薬があるので、アルカリ性に近い状態(pH6.2~6.8)にしましょう。また、野菜、海草、牛乳などのアルカリ性食品を食べるように心がけましょう。尿のpHは専用の試験紙で簡単に測定できます。
日常生活の注意点
- 標準体重を保つ
- 食事は総カロリーに気をつけ、乳製品を多くとる
- お酒はひかえめに
- 水分を多くとる
- 適度な運動をする
- 医師の指示通りに薬の服用を続ける
- 定期的に検査を受ける(お薬を飲んでいる期間中は、お薬の効果、副作用などをチェックするために尿酸値や肝機能を検査しましょう。)